モバックショウ1日目~2月20日(水)~

東京都世田谷区にある超人気店「ブーランジェリースドウ」の須藤秀男さんと江里子さんご夫妻に
実演デモンストレーションを行っていただきました。

実演をゆっくりと見ていただくために腰掛けを多くご用意していたのですが、あっという間に満席に。
立ち見される方も含めて会場通路までいっぱいになりました。

ご自身のお店でのお仕事さながらにデモンストレーションをしていただき、ご自身がこの道に進んだ理由 や、パンへのこだわりなど沢山お話していただきました。

~パン屋さんになったキッカケは~

この業界に入ったキッカケは、母親の影響が大きいです。
母は料理好きで、家では手作りのものばかりでした。
普段から母の作る姿を見て育ったからか、小さい頃からパンとか、お菓子を作るのが好きでした。

~大人気のパンの「世田谷食パン」について~

お店の看板商品は、食事パンにしようとオープン当初から決めていました。
手の込んだ商品より、シンプルな食事パンにした方が、毎日食べていただけるし、お客様が店に足を運んで下さると思ったからです。
だから、食パンとあんパンを看板にしようというのがオープン当初からのコンセプトでした。
ちなみに「世田谷食パン」は1か月先まで予約で埋まっています!

~「世田谷食パン」のこだわり~

毎朝食べたくなる食パンを。
副材料を沢山使用したり、もっちり食感などと言った特徴のあるパンではなく、シンプルで口どけの良さが理想的。酵母は生イーストに、ホップ種を併用。ホップ種にはりんご、マッシュポテト加えています。香りだったり、保水性だったりをパンに付与できているんじゃないかな?

~シェフお勧めの食べ方は~

当日は焼かずにバターを塗って、翌日からは表面をカリッと焼いて食べる。

お店では食パンをオーブンに投入する時に、スリップピールを使っています。
オーブンの扉を開けている時間が短いから、温度が下がりにくいという利点があります。

~生地つくり(混ぜ物入れるとき)~

せっかく、口溶けよく作ったおいしい生地にミキサーで具材を練り込んでしまうと、グルテンを壊してしまいます。混ぜ込むと言うのではなく、うちの店では巻き込むと言った成形をやっています。
今回作ったオリーヴのパンもその考え方で作っています。

この生地でフレッシュな野菜を入れて蒸し焼きにするのがおススメ!
生のトウモロコシを削いで包み込んで焼くと、香りと甘さが生地に移ります。

~実演パンについて(大型パン)~

フォカッチャなどの大型パンは、大きなサイズで焼成して量り売りしています。
小さく丸めて売るよりも、 「おいしさ」を追求すると大きなパンの方が絶対にいいですね。
生産性もいいですから。
販売する時は、オペレーションをしっかりと考えて行わないと大変ですけどね。

~大人気のガレット・デ・ロワ、焼きスドーナツ(焼きドーナツ)~

■ガレット・デ・ロワ

ピーク時は8号サイズのみですが、1日に150~200台売れる逸品です。
アンベルセで3つ折り5回で作っています。
※アンベルセとは通常はバターを生地で包みますが、生地をバターで包む製法です。

■焼きスドーナツ

特徴は、使用する油脂をバターだけでつくると外気温度によって口溶けが悪くなるので、液状油脂の太白胡麻油使っている。包材も用意してギフト対応出来る様にしている。

~クロワッサン~

クロワッサンは、一般的には3つ折り3回の27層が多いと思いますが、食感を少し重くしてバター感を出したいので、うちでは3つ折り2回、2つ折り2回の18層で作っています。バターの香りが強く、パリッとした食感が出せるためです。

~パンへのこだわり~

素材にはもちろんこだわりますが、製法であったり、きっちりと丁寧に仕事する事を重要視しています。
物によっては、産地まで行って、どういう土壌で、どんな人が、どのような作り方をしているのかを見て聞くことで、愛着も違ってきますよね。お店での仕事に関しては、1~10 まで自分が関り、丁寧に作っていくという方針でやっています。

~おいしさの秘訣~

当たり前のことを、当たり前にすること。
真面目じゃないとできない。
パンは生き物だし、データを取って管理していかないとおいしいものは出来ない。
いくら良い材料と設備であっても、基本が出来ていないと良いものは出来ないと思います。
そういった基本は、修業時代の「タイユバン・ロブション」で叩き込まれました。
掃除から、計量、物作りまで、基本が大事だということを。

~奥様の江里子さんより~
パンへの想い、戸倉商事の事などお話しいただきました

お店をオープンさせた1年目から、 おいしいものを作りたいという気持ちは変わっていません。
毎日やっても飽きないし、いくらやっても工夫が飽き足りない。

パン作りを一番初めに教えてもらったのが旦那であるシェフなんです。
今こうして作れるようになったことが嬉しい。
当時の悔しい気持ち。真似しようとしてわからなくなったこと。
そして今、
シェフを言い負かせられることが楽しいです(笑)

見ることが一番。
そして見る視点が大事。
パン作りってシンプルなんで、ちょっとしたところがポイントだったりするんです。
例えば、力加減ですべてが変わってくるなど。

同業目線で言うとシェフの仕事は雑なように見えて実はものすごく細かいんです。

それを受け継ぐうちの仕事は「丁寧がモットー」です。

~戸倉商事(株)について~

お店オープンする時に、戸倉さんのドゥ―コンとかが買えなかったんです。
高かったんで(笑)
実際にお店オープンさせると、自分が生地を作る係なのでミキサーやドゥ―コンは確実なものを使いたかったんです。修業時代に戸倉さんのを使っていたんで、明らかな違いがあったんです。
どうしても戸倉さんのドゥ―コンとかが欲しくなって、シェフと相談して買ったんです!
ドゥ―コン 2 台とフリーザーを。
納品されるとき、トラックの荷台に緑色の扉が見えてね・・・
「戸倉さまが来たー」って(笑)それぐらいうれしかったんです。
信頼できる業者として、いいお付き合いさせていただいています。

~新商品開発について~

食べ歩きが好きなので、レストランに行けば「この食材の組み合わせよかったな」って。
お菓子屋さんに行ってガトーがおいしかったら、「自分のパンにどうやったら取り入れられるだろうか」って。味だけではなく、色の組み合わせとかも大事ですね。
思いついたらすぐ行動して試作です。
奥さんも同レベルで作れるので、2 個ある引き出しから組み合わせて作れるのは強みです。

~お二人の役割分担は?~

シェフ
成形・仕上げ

江里子さん
種の管理、生地の仕込み~窯の管理

お互いの得意分野を行う。
そして、
苦手なところをおぎないながら。

~パン・お菓子・お店作りに関して~

パンもお菓子も愛情持って手間暇かけた分「味」に跳ね返ってくる。
長い目で商売って考えると、目先の楽な方に進みがちですが、きちんと丁寧に仕事する事を心掛けています。自分の場合はしっかりとパンをやりたい。人任せに出来ない。そう思って自分のお店を持ったので。

うちは少人数で仕事しているので、いかに少ない生地で色々な食感を出すかという事を考えています。
例えば一つの生地のバリエーションとして、途中で発酵を止めて冷蔵にしてみたり、薄く延ばして高温で焼いてみたり、鉄板ではなく石床で焼いてみたり、型で焼いたり、同じ生地なのですが、食べると色々な食感や風味のあるパン作りを意識してやっています。
一つの生地で新たな食感を持つパン生地が生まれるので面白いですね。

~これからのパン屋さんについて~

焼き菓子をプラスαすると年間通じて売り上げが伸びます。
お菓子屋さんはパン屋さんと違い、年間通じてイベント事が多い。
ヴァレンタイン、ホワイトデー、母の日、父の日、ハロウィン、クリスマスなど。
売上の山を立てやすいイベント事に乗らない手はないですよね。
焼き菓子に力を入れるのであれば、片手間でするのではなく、年間通してギフト化できるぐらいじゃないとだめですよね。お菓子屋さんと同等ぐらいのおいしさと技術が必要です。

~すてきな笑顔の須藤ご夫妻とスタッフのおふた方~

「おいしさを追求するためには、良い食材、丁寧な仕事、そして、愛情が欠かせませんね」と言うお言葉が 印象的でした。
ありがとうございました。

~モバックショウ2日目~

「有限会社レーヴ」
橋本泰之氏によるデモンストレーションレポート

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